10.
先に行き過ぎることもなく、後に遅れることもなく、「この世の一切のものは実在しない」と知り、貪欲から自由になるならば、そのような求道者は、あの世とこの世を行き来する輪廻転生を捨て去る。あたかも蛇が古い皮を脱皮して捨てるように。
解説
自分の体と心が自分だと思い、自分と世界を分離させるのをやめると、自分というものの不完全さがなくなります。
自分自身が実体のないものだと知らないと、自分自分は不完全で何かが不足しているという感情を生み出します。自分という存在の不完全性を完全にしようとし、心の不足感を埋めようとすることが強くなればなるほど現れる欲求も強くなります。
自分の体と心が自分だという思いを捨てると、自分と世界の分離がなくなり、同時に不完全な自分、不足した自分というものが消え去ります。
一切のものは実在しないと知ることは、完全も不完全もない、不足しているものもない、と知ること、満たすべき何ものも存在しないと知ることです。そこに貪欲さはありません。